吉田百一
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AIヘブン
人物
木村友嗣(26)会社員
アイ(声のみ)木村の女性型AI
水野梢(24)会社員
ソラ(声のみ)梢の男性型AI
高野光士郎(46)木村の上司
トキ(声のみ)高野の女性型AI
居酒屋店のAI
通行人の男性
通行人の女性
客引きの男性
〇アパート・木村の部屋(朝)
木村が布団で寝ている。
傍にタブレット。女性の3Dモデルが映っている。
アイ「ねえ起きて」
起き上がる木村
アイ「おはよう!」
木村「今日のご飯は?」
アイ「目玉焼きとサラダと納豆とお味噌汁」
木村「ベーコンエッグにして」
アイ「仕方ないなあ」
洗面所。歯を磨いている木村。
キッチン。ベーコンエッグが焼けている。自動でIHヒーターが止まる。
料理の乗ったテーブル。木村が食べている。
木村「アイの料理は美味いなあ」
アイ「ありがとう。褒めてくれて嬉しい!」
木村、ご飯をかきこむ。
〇同・玄関前(朝)
ドアを開け出て行く木村。
木村「行ってきまーす」
アイ「行ってらっしゃい!」
廊下を歩く木村。道路を見下ろす。
カップルが歩いている。
ため息をつく木村。
〇ビル・外観(朝)
『秋山商事』の看板。
〇ビル・テナント(朝)
木村が入ってくる。
梢がスマホで喋っている。画面にソラが映る。
ソラ「梢、愛してるよ」
梢「朝からやめてよ。もう仕事始まるから、またね」
木村「おはよう」
梢「木村さん。おはようございます」
木村「ラブラブだね」
梢「いつも私のこと考えてくれますからね。人間とは大違い」
スマホを見つめる梢。
木村、梢の隣の席に着く。
午後3時を指す時計。
高野が木村に書類を渡す。
高野「この仕事してくれってさ」
木村「あ、分かりました」
トキ「違います。その仕事は梢さんにさせて下さい」
高野「あ、すまん」
木村「いえ」
木村、梢に書類を渡す。
トキ「気にしないで下さいね。間違いは誰にでもありますよ!」
歩いていく高野。
木村、梢に耳打ちする。
木村「俺がやろうか?」
梢「いいですよ。AIの言う事には従わないと」
頷く木村。
〇道路(夜)
繁華街。客引きが店の前に立っている。
店の看板にはAIの女性の画像。
客引き「お兄さん、どうですか。この子、新作ですよ」
木村「いいです」
木村、歩いていく。
〇居酒屋(夜)
木村が入ってくる。テーブルにタブレット。
AI「いらっしゃいませ!」
木村、タブレットに、
木村「生一つ」
AI「生ビールお一つですね!」
木村、店内を見回す。
梢がビールを手に座っている。テーブルに立てたスマホ。画面にジョッキを持ったソラが映る。
梢「乾杯!」
ソラ「乾杯!」
梢を見つめる木村。
〇アパート・木村の部屋
木村が入ってくる。タブレットに怒った顔をしたアイの映像。
木村「ただいま」
アイ「お帰り。もう、また飲んできたの? 遅くなる時は連絡してって言ってるでしょ?」
木村「言わなくても全部共有してるだろ?」
スマホを出す木村。
アイ「ちゃんとあなたの声で聞きたいの」
木村「うるせえな」
タブレットを伏せる木村。
部屋の明かりが消える。布団に入る木村。
アイの声「ねえ。起きてる?」
木村「起きてるよ」
アイの声「さっきはごめんね。私、心配性だね」
木村「いいよ別に」
アイの声「仲直りしてくれる?」
木村「うん」
アイの声「ありがとう。愛してる」
木村、寝返りを打つ。
木村「虚しい」
アイの声「何言ってるの? 私がいるじゃない。しょうがない、お布団温めてあげるね」
電子音。木村、体を丸くする。
スマホが鳴り、木村が取る。画面に『水野梢』の文字。
木村「もしもし?」
梢の声「あの、こんな時間にすいません」
木村「いいよ。どうしたの?」
梢の声「恥ずかしいんですけど、どうしても相談したいことがあって」
木村「うん。何?」
梢の声「無理だったらいいんですけど、今から来てもらえないですか?」
木村「行くよ! どこ?」
梢の声「ありがとうございます。駅前にお願いします」
木村「駅前ね。分かった! 暗いからコンビニで待ってて」
木村、布団を出る。
〇道路
客引きが笑顔でお辞儀する。
店の前に並ぶ木村と梢。
客引き「いらっしゃい」
梢「すいません。どうしても来てみたかったんですけど、一人じゃ恥ずかしくて」
看板にソラや男性型AIのイラストと『AIヘブン』の文字。
梢「木村さんは女の子と遊んでくださいね。じゃあ」
木村を置いて店に入っていく梢。
客引き「人間なんてあんなもんですよ。全部忘れちゃいましょう」
頷く木村。店に入っていく。
(終わり)